冷たい彼との物語

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 久しぶりに家に帰ってみると、知ってはいたが家の中はガランとしていた。ほとんど物がなく、きれいというよりは物悲しい状態だ。  最低限の家電、箪笥、テーブルにノートパソコン。毎日のように使っていたパソコンは、中身もなく、さっぱりした状態で、私の帰りなんて待ってなかったかのような顔でそこに置いてあった。  先生は箪笥の上の母の写真をまっすぐ見据えると、 「お母さま、亡くなったんだったね。手を合わせてもいい?」  私は静かに頷く。  すると先生はまっすぐ母の遺影の前に行って、目を瞑り、静かに手を合わせた。  私はその後姿を見て、なんだか言葉に詰まった。  先生は母のこと、覚えていてくれたんだ。もう誰も、母のことも、私のことすら、覚えていないのかと思っていたのに……。
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