冷たい彼との物語

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 吐いた息がやけに白くて、まだ冬だったんだな、と思った。  あの長い長い一か月が寒い冬をどこかに追いやってくれていると思ってたのに……。  すっかり暗くなった空を見上げて、思いっきり息を吸った。  天井がやけに低いあの室内に閉じ込められていた日々のことを思えば、少し寒いくらいどうってことない。  それに『あの人』……。久しぶりに再会した『あの人』と、もう顔を合わせなくていいと思うと、やけにほっとしていた。 ―――はずだった。 「なっ、なんでここにいるんですか……⁉」  私は驚愕して、その場に倒れそうになる。  大荷物をもって我が家に帰ってみると、我が家のアパートのドアの前に男が一人座っている。高身長で黒髪、シルバーフレームの眼鏡がその冷たい雰囲気によく似合う、この一か月で随分見慣れた男だ。  するとそんな私に気づいた男は、座ったまま私を見上げて、 「実は今日、久しぶりに家に戻ったら、火事でアパートが全焼してしまっていた」 と、診察の時と同じように冷たい声で、淡々と話し出した。そして立ち上がり、足についた砂埃を払う。 「はい?」 (全焼? 全焼って、あの全焼? 焼けてなくなったってこと? ってか、それが私と何か関係ある?)
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