暗雲の予兆

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暗雲の予兆

「ねー、フローリーちゃん!」 「なに」 いつものように、港に在庫調達に来たエイヴリー海賊団一行。そしていつものように、その担当はロロネとフローレンス。これが当たり前。 そう、これが彼らの日常。 「俺さー……あ!あの子可愛いー!……ん?」 またいつものように町娘に声をかけようとしたロロネが、ふと眉間にシワを寄せた。 「ん?」 その違和感に気付いたのか、フローレンスがロロネの方を振り返る。 「どうかした?」 フローレンスが振り返ると、ロロネがさっとフローレンスの前に立ち塞がった。 「なんでもないよ、行こ?」 ニコッと不自然にロロネが口角を上げるのと、誰かがロロネの肩を叩くのは同時だっただろう。 「久しぶりなのに挨拶もなし?」 聴き慣れないその声にフローレンスがロロネの肩の向こうを覗くと、銀髪でセンター分けの男が見える。 「久しぶりじゃん、ロロネ」 ニヤリと口角を上げるその男に、ロロネが険しい顔で振り返る。 「久しぶり……サイモン」 サイモンと呼ばれた男が、チラリとフローレンスを見る。 「なに、彼女?昔はあんなに遊んでたのに、今じゃすっかり落ち着いたんだ?」 からかうようなサイモンの言い方に、ロロネの眉間にまたシワが寄る。 「昔の話なんか忘れたわ。つか、彼女じゃねーよ」 威圧するように低いロロネの声。だがサイモンはケラケラと笑って、面白そうに二人を見比べる。 「へぇ、彼女じゃないの?じゃあ俺狙っちゃおうかなー?君、名前は?」 ロロネをヒラリとよけて、フローレンスに手を伸ばすサイモン。だがロロネがその手を掴んだ。 「触んな」 ロロネがギロリとサイモンを睨むと、掴んでいた手を払い除けてフローレンスの手を掴む。 「……行くぞ、フローレンス」 フローレンスの手を引いて歩いて行くロロネの後ろ姿を見ながら、サイモンがポツリと呟いた。 「フローレンスちゃん……ねぇ」
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