0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
暗雲の予兆
「ねー、フローリーちゃん!」
「なに」
いつものように、港に在庫調達に来たエイヴリー海賊団一行。そしていつものように、その担当はロロネとフローレンス。これが当たり前。
そう、これが彼らの日常。
「俺さー……あ!あの子可愛いー!……ん?」
またいつものように町娘に声をかけようとしたロロネが、ふと眉間にシワを寄せた。
「ん?」
その違和感に気付いたのか、フローレンスがロロネの方を振り返る。
「どうかした?」
フローレンスが振り返ると、ロロネがさっとフローレンスの前に立ち塞がった。
「なんでもないよ、行こ?」
ニコッと不自然にロロネが口角を上げるのと、誰かがロロネの肩を叩くのは同時だっただろう。
「久しぶりなのに挨拶もなし?」
聴き慣れないその声にフローレンスがロロネの肩の向こうを覗くと、銀髪でセンター分けの男が見える。
「久しぶりじゃん、ロロネ」
ニヤリと口角を上げるその男に、ロロネが険しい顔で振り返る。
「久しぶり……サイモン」
サイモンと呼ばれた男が、チラリとフローレンスを見る。
「なに、彼女?昔はあんなに遊んでたのに、今じゃすっかり落ち着いたんだ?」
からかうようなサイモンの言い方に、ロロネの眉間にまたシワが寄る。
「昔の話なんか忘れたわ。つか、彼女じゃねーよ」
威圧するように低いロロネの声。だがサイモンはケラケラと笑って、面白そうに二人を見比べる。
「へぇ、彼女じゃないの?じゃあ俺狙っちゃおうかなー?君、名前は?」
ロロネをヒラリとよけて、フローレンスに手を伸ばすサイモン。だがロロネがその手を掴んだ。
「触んな」
ロロネがギロリとサイモンを睨むと、掴んでいた手を払い除けてフローレンスの手を掴む。
「……行くぞ、フローレンス」
フローレンスの手を引いて歩いて行くロロネの後ろ姿を見ながら、サイモンがポツリと呟いた。
「フローレンスちゃん……ねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!