世界の中心にて忠告す

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

世界の中心にて忠告す

 気づけばそこは瓦礫の山であった。鼻を曲げたくなるような焦げ臭い匂いが辺りに充満している。  体を起こそうと思うが、自分自身も瓦礫の山の一部になっている事を理解し、手足を動かそうとしてもそれが自分の頭と神経でつながっていないような感覚に襲われ、全く動くことができない。もしかすると四肢の一本ぐらいは本当に切れているのかもしれない。しかし痛覚は鈍く、どこが痛みなのかも、どこが自分の体なのかもよく分からない。  鉛のような体をなんとか動かし周辺を見渡すと、先程までむさ苦しいほど建造物が並んでいた通りがそれらを土壌とした荒原になっていた。しかし、私はなぜかそれらが自分の走馬灯の最終ページであるかのように美しく感じた。  人間の本能としてそれを美しく感じることと逆に私の感情は怒りと、後悔で満ちていた。もっとうまくやれただろう。そんなことを自分にも他の全人類にも同じ感想を持った。  もしまだ人類が生き延びているとするならば、私はその人と子孫に対して忠告するであろう。この災害はまた起きると。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!