曽我蔵人の求愛

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   俺がおらんでもって……何で? まさか出てく気か? 何で? 「俺、合宿所に移るわー」 「な、なんでっ……」  雄大はヘラっと笑う。 「ジェイクは安藤さんと一緒で食事から何からトータルで面倒見てくれる人気トレーナーっちゃ。前はハリーについててさー。劇的に飛躍的に成長させた凄腕!」  ジェイクが何者だろうと……全部上滑りして行く。  そりゃ、雄大と一緒だとザワザワするしモヤモヤ気不味い思いもある。  最初は『勘弁してくれ』ってマジで思ったし。好きな相手とルームメイトで、でもチームメイトで。俺すぐに顔に出るから、誤魔化せないからって。  こんな複雑も複雑な感情を抱えても、それを凌ぐくらい雄大と過ごす時間は心地よくて───── 「クロードへの期待を感じる!気合い入れて集中して頑張れよ」 「…………ヤダ」 「色々厳しくてもヨソみたいに簡単に辞めれると思うな。俺が許さんから」  「やだっ」  嫌だ。雄大がここから居なくなるなんて嫌だ。当たり前みたいな顔で転がり込んで来て、当たり前みたいな顔で出て行くとか勝手だ。ワガママだ。俺よりずっとワガママだ。 「クロード」 「やだ……」  自分が性格の悪い鼻摘まみ者だって自覚してる。  いろんなチームを転々として来た、根無し草みたいに頼りない人間だってわかってる。柊さんみたいに自分のスタッフを揃え、ボスとしてチームを引っ張る人望もない。  こんな中途半端な俺でも手を差し伸べてくれたロジャーに恩返しする為なら、もう一度飛ぶ為なら、どんなに厳しくて辛いトレーニングでもこなしてみせる。  でも、でも。
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