曽我蔵人の求愛

1/26
127人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ

曽我蔵人の求愛

   アメリカ・マサチューセッツ州都ボストン。  赤煉瓦の街と謳われる通り煉瓦造りのノスタルジックな建造物も多いけれど、割と近代的な街だなーって印象。ただ、海が近いせいか山の向こうのニューヨークより空が広い気がする。  まあ、ニューヨークなんて観光で一回行ったきりだけど。  取り敢えず外は寒い。  歩道の端に解け残った雪がゆうべの寒さを物語る朝。  早朝のロードワークはロジャーの世話になるようになって一番に再開した。  こんな性格の悪いイジケ虫の俺でも強くあったかくハグしてくれた温情に報いるため、(なま)った心身を鍛えなければならないのだ。  が。  俺は今朝も香ばしい匂いが漏れ出てくるこの店のスイングドアを開ける。 「Morning!You’re early today!」 「Good morning……」  エーゴはぼちぼち、人間関係は日本よりマシ、トレーニング環境は◯  人肌程度の温もりが残るバゲットとベーグル、今日はゲットできたサワードゥを抱きしめ若干速足でアパートに戻る。  ここもやっぱり煉瓦造りのエントランスを一歩入ると暑い。一気に汗が噴き出してイヤだ。  建物全体を暖めるセントラルヒーティングってヤツは乾燥も酷いしどうにも馴染まない。こっちに住むなら加湿器必携って雄大(ゆうだい)が言ってた意味がよくわかるわ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!