曽我蔵人の求愛

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  「クロード」 「え、なに」 「食事中はイヤホン外せ。スマホもしまえ」 「え〜〜」 「何がえ〜〜じゃ行儀悪い」  例えば外で食事会でとかならやらないけど、自分ちでくらい自由にさせろ。一人なら当たり前に出来る事が二人だと小言に繋がって窮屈。  それに……俺は雄大が目の前に居る事を極力意識しないようにしてるんだ。気不味くならないための努力なんだこれでも。 「雄大、今日の予定は?」 「午後から本部のスタジオでスチール撮り。夕方から夜までトレセン」 「ふーん」  雄大は日本人離れした体格、平昌五輪メダリストって経歴もあってローレス製品のメインモデルを務めている。プロデビューからローレス一筋ロジャー一筋、俺みたいなデキの悪い子とは待遇が違うのだ。忙しいのだ。  入ったばかりのペーペーな俺はジムが空いてる時間帯に練習生に混じって基礎トレをさせて貰い、コース予約も自分で行う。ソチのメダリストだろうが直近の五輪では棄権、今季まだタイトル戦に出てもないから仕方ないけどちょっと切なかったりもする。  いや、それでも部屋を与えられメシを食わせて貰えるだけ俺は恵まれている。 「調子どうよ。ちゃんと飛べそう?」 「飛ぶよ。今季は1440ー1440にチャレンジする」 「あんま無茶せんよ……ロジャーやトレーナーとちゃんと相談しながら」 「コンボ飛べないと柊さんにもたいちゃんにも勝てない! そんなん雄大が一番解ってんだろ! 二人に追い付くのさっさと諦めて競技転向しやがってっ……!」 「まだ言っとるんか」 「だって俺はっ」  俺は雄大と同じステージに立ちたかった。ずっと同じ道で競り合いたかった。 「じゃあお前もスロープスタイルと掛け持ちすれば」 「そんな姿勢であの二人を倒せるかバーカバーカ」
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