曽我蔵人の求愛

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   ああ駄目だ。またやっちまった。  ついつい憎まれ口を叩いて自ら墓穴を掘る。  こんな可愛くない俺、嫌われてもしょうがないけど雄大に嫌われんのはイヤだ。 『お前のこと心配してやっとるんだろが!』 『心配してくれなんて頼んでねーわ!』  ギャーギャー罵り合い、時には殴り合い寸前まで発展するのがいつもの流れ。体格差があるせいか雄大が寸前で退くから実際に殴り合いにはならないけど。  でも今の雄大は、大きな溜息を吐いたあとでじっと俺を見つめる。  最近こーゆーのが増えて心臓に悪い。 「なな、な、なんだよっ……」 「ヒゲ。ちゃんと剃って出ーよ。せっかく髪切って爽やか少年になったし」 「少年じゃねーわ!」 「はいはい」  グローブみたいに大きな手が伸びて来てつい身構えると、雄大は俺の頭を優しくポンポンして。空いた食器を片付けキッチンに立った。  こっちを振り向かない大きな背中に胸がぎゅっとなってしまう。  なんだよ頭ポンポンて。  ズルいだろ。  ドレッドじゃなくなった髪に雄大の手の感触はダイレクトに響く。残る。  俺がどんだけ意識しないように努力してるかも知らず、平気で触って来るなんて酷いだろ。  男に片想いする男の切なさなんか雄大には届かないんだ。
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