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片想いが切ないのは常。世の常。
モヤモヤするのは男同士だからなのか何なのか解らないけど。
こんな時は取り敢えず走る。
ロードワークでもマシンでもとにかく走る。
競技を始めた頃からスタミナ不足が課題だった俺は、どこに行っても走れ走れと指導された。
俺は地上に足をくっつけて走り回るスポーツやってんじゃねーよ、空に飛び出してってくるくる回りたいんだよって頭の中で吠えても(時々声にも出して吠えたけど)、結局地道にやるしかない事は身に沁みて解っている。
まして半年もブランクがあれば尚更だ。碓氷村でトレーニングしてみてつくづく思った。衰えた筋肉をもう一度飛ぶ為のバネに変えるには基礎トレと栄養、あと根性。根性を鍛えるには走り込むのが一番だろ。
「そんな根性を鍛えるみたいな走り方はダメだよー」
「……ロジャー!」
「ハロークロード♡」
EXTREMES本戦までふた月を切った今、ロジャーはモントリオールに缶詰めだって聞いたのに。あ、そーか、本部で撮影だったからか。
現役から退いて4シーズン。元 “ハーフパイプの帝王” は今も競技者達の一番の理解者であり支援者。その余裕、めっちゃカッコいいよなーチクショウ。
「ユーダイから聞いたよ。今季1440のコンボにチャレンジするの?」
「うん……したい」
「じゃあ尚更ひとりの時に無茶するのはダメ。近々トレーナーのジェイクに専属でついて貰うから彼のメニュー通りに」
「専属!」
「タイミングがズレちゃってごめんね。EX本戦に間に合うスケジュールでオーダーしたら何故かジェイクのボストン入りが週明けになっちゃって」
「…………」
「この国ではよくある事さー♡でもユーダイが居たから寂しくなかったよね? ね? HAHAHA!」
HAHAHAじゃねーわ。ボスに構って貰えなくて心細かったわ。雄大と居るとザワザワするし切ないし。
でも確かに寂しくはなかった。うん。
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