3人が本棚に入れています
本棚に追加
学生時代には、周りがこんな女ばかりで辟易したものだが、学校に勤務してからは違った。
学校司書として働く女性は、皆が皆、自身と、どこかしら同じ匂いを発散していて、美園も安心して過ごしていた。
図書館で働きたがるような女性って、おとなしいし、どこかしら影がある。でも、そこが落ち着けて好き!という具合に。
だというのに天野は違う。こんなに派手に飾り付けて、チャラチャラして。
それにあのダイヤのネックレス。どうやって、あんな高価な物を買ったんだろう?
美園の持っているジュエリーはと言えば、祖母から貰った真珠のネックレス位である。
だが用途はと言えば、葬式位。天野の胸元で優雅に揺れているダイヤとは大違いで、美園は悲しくなった。
恐らく、この頭の軽そうな若いだけが取り柄の女には、ダイヤをプレゼントしてくれるような男性がいるのだろう。
「川越先生。引き継ぎ内容については、ザッとお話したつもりですが、大丈夫ですか?」
モヤモヤした念にさいなまれる美園の胸中など知ることもなく、天野はこちらに顔を向けてきた。
美園は更に不機嫌な声色で「いえ、別に」と返した。
「そうですね。川越先生は司書の大ベテランですもんね!何も心配なんか、ありませんよね!」
目上の存在である美園を立てようとして、天野はその言葉を発したが、美園は素直に受け取れなかった。
大ベテランって、結婚も出来ずに此処にずっといる私への当て付け?
美園は天野の事を無視して、荒々しく鞄を手に取った。天野は、なぜ美園が急にプリプリし出したのか意味が分からず、彼女を玄関まで見送っていった。
「では、川越先生お気を付けて。本日は、お疲れ様でした」
天野は恭しく頭を下げた。そんな彼女に美園が投げ掛けた言葉はこうだ。
「天野先生。学校は着飾る場所じゃないですから、もう少し、控えめにした方が良いですよ。お化粧やら色々」
最初のコメントを投稿しよう!