3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまー!」
ルンルン気分で帰宅すると、美園の母・典子が娘を見て、顔をしかめた。
「まぁ!お前ってば、またエラく呑んできたね。いい年した娘が、みっともないったらありゃしない」
美園はカチンと来ながら、パンプスを脱いだ。
「ふん!何さ!こっちにも付き合いってもんがあるのよ!」
「付き合いって言ったって、お前はパートみたいなモンなんだから、正社員の扱いの先生とドンチャン騒ぎなんて、恥ずかしくって」
「なんですって!」
美園は、目をキッとさせて、母を睨んだ。
「そうだよ。きちんとした稼ぎもない。嫁にも行かない。そんな娘が、仕事の付き合いだなんて、よくも偉そうに。おかしくて、鼻で笑っちゃうね」
美園は耐えきれなくなり、無言で2階の自室へ掛け上がった。
そしてベッドに倒れ込むと、耐えきれなくなりワンワン泣き出した。
いつからだろう。母が、あんな態度で自分に接するようになったのは。
大学を卒業して数年は、「都会に行くより、家にいる方が良い」と言って、いつもニコニコしていた。
「美園には、きっと良い人が現れるから、急がなくていいんだよ」と言ってくれていたのに。
最近は、口を開けば「正社員の仕事を探せ」か「嫁に行け」のどっちかだ。
そして、父はそれを諌める事なく、真ん中でオロオロ聞いているだけ。
美園は、自分が年を重ねるごとに、家庭内の居心地が悪くなるのを肌で感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!