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ありがとう、ひょうご君。
小学一年生の頃、初めて出来た友達「ひょうご君」。クラスメイトの「マサル君」。
帰り道が同じだったマサル君の提案で駄菓子屋に入った。
「なぁ、何食べる? おごるよ」
マサル君は僕とひょうご君にお菓子をおごってくれる、そう思った。
僕がレジのお婆さんに10円チョコを渡すとマサル君はにんまりして言った。
「お前にはおごらねぇよ」
僕は泣いて帰った。こんな事されたのは初めてだった。
ひょうご君は固まっていた。マサル君が仲違いを仕掛けた。ひょうご君もまた、こんな状況に巻き込まれるのが初めてだった。
裏切られた気持ちになった僕は、残りの夏休み、いくらひょうご君に家の玄関前で遊びに誘われても、泣いて謝られても、呼び掛けに応える事は無かった。
夏休みが終わって二学期になると、担任の先生が皆に話をした。
「皆にお知らせがあります。ひょうご君はご両親の都合で転校する事が決まっていました。ひょうご君の希望で内緒にする事になっていたので、ごめんね。その代わり皆でお手紙を書きましょう」
僕はまだ気持ちが晴れていなかった。マサル君とも二学期早々に喧嘩をした。
書いた手紙にも「友達じゃないよね」と書いてしまった。
後日、僕宛に荷物が届いた。
ひょうご君からだった。
学校から帰ると母から説明を受けた。
野暮な母なので、勝手に荷物を開けていた。
「大事にしていた玩具なんだって。あんた、大切にするんだよ?」
ひょうご君の大切な玩具。首の長い怪獣と変身ヒーローのソフビ人形。体の一部に「ひょうご」と名前がある。
大切なオモチャを譲る。
それは友達の証だった。
ひょうご君ありがとう。そして、ごめんね。
君の贈り物は僕の宝物。
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