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卵の中の神さま
滅びかけている世界に、大きな卵がありました。
もとは何だったのかわからない、たくさんの瓦礫が転がっています。静かな風が、わずかに残った植物や小さな虫をなでていきました。
卵はそんな世界の丘の上にありました。それは、神さまの卵でした。滅んだ世界の後にあらわれる、次の世界の神さまの卵でした。
神さまは、卵の中で目を覚ましました。
神さまがあたりを見回すと、壁のような、卵の殻がありました。耳をすましてみると、風の音が聞こえました。
でも、それだけでした。神さまはすぐにつまらなくなってしまって、ずっとぼんやりして過ごしました。
ある日、卵の外から音が聞こえてきました。何かが地面をふみしめながら、こちらへやってくるようです。音が止まりました。卵の近くで立ち止まったようです。
もしかして、ぼくを食べてしまうつもりだろうか。
そう思って神さまは身がまえました。
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