人間の男の子

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人間の男の子

 ある夕方のことです。人間の足音が、神殿に近づいてきました。最近ではめずらしいな、と神さまは思いましたが、ねがいごとを言いにきたのだろう、と考えて気にもしませんでした。  ぱたぱたとせわしない足音が、卵の近くまでやってきました。  足音が止まり、草がかさりと鳴りました。人間がそこに座ったようでした。人間は、何やらがさごそと音をたてました。神さまは、ちょっと変だなと思いました。大体みんな卵の近くにやってくると、すぐにねがいごとを言っていたものです。  人間はがさごそするのをやめると、ぺらり、という音をたてました。 「むかしむかし、あるところに、魔法使いがいました……」 神さまは思わず卵の殻に耳をくっつけました。それは、困っている人たちを助ける「魔法使い」という人間のお話でした。  お話をし終えると、人間はかけ足で帰っていってしまいました。 「お話をきくのはいつぶりだったろう。また、きてくれるのかな。いや、そんなことはないにちがいない」
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