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でも次の日の夕方になると、神さまはつい耳をすませてしまいました。
「足音なんてきこえてくるはずがない、わくわくした分だけ悲しくなるんだ」
自分に向かって、そう言いましたが、気持ちは外にひきつけられていました。
はずんだ足音が聞こえてきました。それからやっぱり、その足音の持ち主は卵の近くに座ると、がさごそやったあとにぺらりと音をたてました。
「むかしむかし、あるところに、勇敢な剣士がいました……」
神さまはまた、それを聞いていました。
「あの子はもしかして、ロスマの生まれ変わりなのかもしれない。たしかに、ロスマよりせわしない感じだけど、やってることは同じだもの」
そう思った神さまは、卵の殻に小さなすき間をつくりました。外をのぞいてみると、人間たちがつくった神殿の、今はもう古びた柱が見えました。
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