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夕方になると、もう聞き慣れた足音が聞こえてきました。神さまは、すき間から外をのぞいてみました。
卵のところにやってきたのは、人間の子どもでした。黒くて短い髪で、大きな緑色の目をした男の子です。その子は、茶色くて四角いかばんを背中から下ろしました。その中から紙の束みたいなものをひっぱり出して、ぺらりとめくりました。
「むかしむかし、あるところに、まずしいおじいさんとおばあさんがいました……」
子どもがお話を終えると、神さまは急いで言いました。
「こんにちは! あの、お話をしてくれてありがとう」
「どういたしまして。あれ、誰かいるのか?」
子どもはあたりを見回しました。
「ぼくにお話してくれたわけじゃなかったの?」
「練習してたんだ。来週、学校で読み聞かせの会があってさ。おれはこの絵本を幼稚園の子たちの前で読むんだよ」
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