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ぼくに話してくれたわけじゃないってことは、この子もちがうのだろうか。でも、思い出してないだけかもしれない。はっきりさせるには、もっとこの子と話さないといけないな。
神さまがそう考えていると、子どもが聞いてきました。
「きみはだれ? どこにいるんだ?」
「ぼくは、だれでもないんだ。この卵の中にいるよ」
「卵って、この大きな岩みたいなやつ?」
子どもは卵のすき間をのぞきこみました。神さまは、自分の姿がどういうふうに見えるのかわからなかったので、少し緊張しました。
「真っ暗で何も見えないな。あっ、もしかして神さまだろ! ここにくるとねがいがかなうってうわさが、昔あったらしいしな」
「それはうそだよ。人間が勝手に言ってるだけなんだ」
「そうなのか? なあ、きみ、よかったら、おれの練習を聞いてくれないか」
神さまにとって、子どもがそう言ったのはねがってもないことでした。かれともっと話さなければならないのです。
「ああ、いいよ」
「ありがとう。おれ、セージっていうんだ。きみは、名前とかないの?」
「ぼくは、名前はないんだ」
「そっか。でも名前がないってのは話しにくいし、何かいいのを明日考えてくるよ」
セージはそう言い残して、帰っていきました。
「やっぱりセージは、ロスマの生まれ変わりかもしれない。だけど、もう来てくれなかったらどうしよう」
神さまはそんなことばかり考えて一日をすごしました。
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