13人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
セージの昔話
卵のすき間から見える景色がオレンジ色に染まると、セージがやってきました。
「こんばんは! 名前、考えてきたぜ。ミルザっていうんだ。神殿のとなりに木があるだろ。すごくいいにおいの木さ。あれの名前をもじってつけたんだ」
「木? ああ、あれだね」
卵のすき間から外を見回すと、神殿の柱の向こうに大きな木がありました。その木が生えているのは、神さまがロスマの骨を埋めたあたりでした。
「ありがとう、とっても気に入ったよ。じゃあ今日からぼくは、ミルザだね」
「よかった! あらためてよろしくな、ミルザ」
その日セージがしてくれたのは、最初にきいた魔法使いのお話でした。
「前に一度していたお話だね」
「読み聞かせをする分は、もう一周しちゃってさ。あとはもっとうまく読めるようにしようと思ってるんだ。退屈だよな、ごめん」
「そんなことはないよ。何回聞いても楽しいよ」
「ありがとう。明日も、お願いな」
セージは、名前をつけるという約束をちゃんと守ってくれた。ロスマがやろうとしていたことをやってくれたんだ。それじゃあきっと、ロスマの生まれ変わりだよ。
セージを見送りながら、ミルザはそう思いました。
最初のコメントを投稿しよう!