セージの昔話

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セージの昔話

   卵のすき間から見える景色がオレンジ色に染まると、セージがやってきました。 「こんばんは! 名前、考えてきたぜ。ミルザっていうんだ。神殿のとなりに木があるだろ。すごくいいにおいの木さ。あれの名前をもじってつけたんだ」 「木? ああ、あれだね」  卵のすき間から外を見回すと、神殿の柱の向こうに大きな木がありました。その木が生えているのは、神さまがロスマの骨を埋めたあたりでした。 「ありがとう、とっても気に入ったよ。じゃあ今日からぼくは、ミルザだね」 「よかった! あらためてよろしくな、ミルザ」  その日セージがしてくれたのは、最初にきいた魔法使いのお話でした。 「前に一度していたお話だね」 「読み聞かせをする分は、もう一周しちゃってさ。あとはもっとうまく読めるようにしようと思ってるんだ。退屈だよな、ごめん」 「そんなことはないよ。何回聞いても楽しいよ」 「ありがとう。明日も、お願いな」  セージは、名前をつけるという約束をちゃんと守ってくれた。ロスマがやろうとしていたことをやってくれたんだ。それじゃあきっと、ロスマの生まれ変わりだよ。  セージを見送りながら、ミルザはそう思いました。
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