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読み聞かせの会の二日前になった日、セージはまずしいおじいさんとおばあさんのお話を練習しました。
そのお話では、まずしいおじいさんとおばあさんが、ねずみたちを助けて宝物をもらったのですが、となりの家に住んでいるいじわるなおじいさんとおばあさんはその宝物をだましとろうとして、怒ったねずみたちに穴に埋められてしまうのでした。
「いじわるなおじいさんとおばあさんは、ひどいめにあってしまったね」
「宝物をだましとろうとしたからなあ。昔話だと、だましたりうそついたりすると、ばちがあたることもあるんだよ」
ミルザは何だかこわくなってしまって、ちがう話をすることにしました。
「セージ、いまさらだけど、きみはずいぶん読み聞かせ会に熱心なんだね」
「おれ、幼稚園の先生になりたいんだ。だからお話が上手にできないとな」
「どうして先生になりたいの?」
「おれは小さいころ、すごく泣き虫で、人と話すのも苦手だったんだけどさ」
「そんなの、信じられないよ」
「それなら、今のおれはけっこう話上手に見えてるってことかな。幼稚園のときのカミル先生が、きみならぜったいだいじょうぶ、ってはげましてくれたんだ。それでおれもこんなふうになりたいって思ったんだ」
「やさしい先生だね。今は、どうしてるの?」
「最近はずっと会ってないから、わからないな。でもおれの心の中にはいつでもいるよ」
セージは自分の胸を、どんとこぶしで打ちました。
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