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生き残りの昔話
何かは、卵のまわりをぐるぐる回っているようです。ずしりという音がしました。卵のとなりに腰を落ち着けたようです。
「やあ、こんな大きな卵を生む生きものが、まだいたんだなあ」
そんな声が聞こえました。風の音よりも重みのある、落ち着いた声でした。何かが、卵の表面をそっとなでました。
食べるつもりじゃないみたい。
神さまはほっとしました。
「それにしてもこんなところで、さみしかろうなあ。ここはひとつ、生まれてくるまでおれが見ていてやろう。どうせすることもないしな」
神さまは喜びました。とにかく退屈ではなくなるのです。
「きみに名前をつけてやらないといけないな。いいのが思いつくまで待っててくれよ。おれの名前はロスマ。この世界の生き残りってやつだ。これからよろしくな」
神さまはよろしく、と返事をしたかったのですが、まだ声を出すことができませんでした。
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