神さまの旅立ち

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神さまの旅立ち

 読み聞かせの会の当日になりました。夕方になると、やっぱり足音が近づいてきました。 「どうだった?」 「ばっちりだ! みんな喜んでくれたぞ。先生たちも、聞く人のことを考えて読めるようになったって、言ってくれたんだ。きみのおかげだよ、ミルザ。実はさ、お話の練習を聞いてもらうのがはずかしくて、誰にも頼めなかったんだ。きみに聞いてもらってなかったら、できなかったと思う」 「ぼくはなんにもしていないよ。きみががんばったんだ」 「ありがとう。なあ、今日からは昔話する以外のことでも、遊べるぜ。なにがしたい?」 「楽しそうだね。でも、だめなんだ」 「ええ、どうして?」 セージの声がはじめて、悲しげにふるえました。 「ぼくは今まで、自分がつくった生きものたちをほったらかしにしてしまった。ロスマをつくることばかり考えて、それぞれの生きものたちのことを見ようとしなかった」  ミルザは一度言葉を切り、少し明るくなった声で続けました。 「だからこれから、ここを出て、ぼく自身が生きものの姿になって、世界のみんなに会いに行こうと思うんだ。いろんな生きものと一緒に暮らして、みんなのことを知りたいんだ」 「それが、きみのやりたいことなんだな。でもそれなら、世界のどこかにいるんだよな」 「そうだよ。ときどき、きみに会いに行くからね」 卵が、強い光を放ちました。
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