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ロスマは毎晩やってきて、お話をしてくれました。
「海」という、水に覆われた場所に住んでいた、「魚」という生きもののお話。
群れを作って暮らしていた、するどいキバのある、「狼」と呼ばれる生きもののお話。
そのほかにも、たくさんありました。神さまはそれらを聞いて、笑ったり泣いたり、怖がったりしました。
しばらく経った日、ロスマはため息をついて言いました。
「きみの名前なんだが、なかなかいいのが思いつかないんだ。何しろ世界にろくなものが残ってないからな。おれの名前だって、とうさんとかあさんがどうやってつけたものか、よくわからない。それに、こんなに色んな話をしてみたって、誰もこの世界には残っていないんだよな。きみは生まれてきたら、がっかりするかもしれない。したいことも、することも、できることも何もないんだから」
そんなことないよ。あなたは毎日ぼくのところにやってきてくれるじゃないか。あなたに会えたらそれだけで、とってもうれしいよ。
神さまはそう言いたかったのですが、やっぱりまだ声を出すことはできませんでした。
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