13、愛日と落日⑥

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「先輩はどこの学部なんでしたっけ? 社会学?」 「そう。グローバル共生文化学科とかいうちゃれー名前のとこ。まひるに聞いてない?」  夕真は自嘲するように肩を竦め、気まずげにちらりと重陽を見上げた。 「あー……なんか、言われてみれば聞いた気がします。でもおれバカだから、きっと長くて覚えらんなかったんすね!」  会話を広げたくてしたフリがまたしても裏目に出て、もう笑うしかない。 「ははは! ま。バカじゃなくても、彼女と話してる時なんか彼女に夢中で兄貴の話なんか入って来なくて当然か」  彼の専攻は確かにまひるから聞いていたけれど、同じ轍を踏みたくなくてあえて知らないフリをした結果がこれである。 「いやいやいや、違うんですって違うんですって! っていうか──」  と目を泳がせながら慌てて弁解を始め、しかし重陽は「おれがするこの表情、このジェスチャー、この声音は、このあとこういう会話、こんな展開にハンドルが切れるはず」という計算を怠らない。  聞いてないんすか!? おれ、フラれたんすよおたくの妹さんに!!  ダメだ。茶化して言ったとしても根掘り葉掘り聞いてくる人じゃないだけにあとが気まず過ぎる。  そんなことが分かるってことは先輩、まさかカノジョできたんすか!?  もっとダメだ。「実は……」なんて話が始まったら即死する。  残るカードは──。 「ここ、滑り止めだったってハナシじゃないすか! 気まずくて先輩の進学先の話なんかできなかったですって!」  肉を切らせて骨を断つ! とばかりに、小声で続けた。  すると夕真は拍子抜けしたように「はあ?」と言って、煙たいミントの匂いを纏う声で笑う。
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