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「ふうん──……で?」
なんだかウキウキしたような声音で話を振られたものの、申し訳ないが、全くもって一切興味がない。
もしかすると「一切」という強めの単語がパッと出てくる程度には深層心理では思うところがあるのかもしれないが、表層心理においてはとにかく興味がない。
「いや『で?』ってお前。なんとも思わねーの? 年末にコクられてたろ?」
信じられない。とでも言うように、彼は目を眇めながら重陽の顔を覗き込んだ。
「え、思わないですね……むしろ、遥希とジュンちゃんはとっとと付き合っちゃえばいいのにって思ってたけど?」
「へえ……」
と言って彼は、にやりと口角を上げて見せる。
「それってやっぱお前、オンナにキョーミねえからなんだ? ホモだホモ」
その瞬間。カッとなったと同時に「待ってました!」とも思った。
「別にいいだろホモでもなんでも。っていうか、そういうイジりすんのめちゃくちゃイタいよ。まだ気付いてねえの?」
重陽は一年から三年の今に至るまで彼に「ホモくさ」とネタにされイジられ続け、思えばずっと逆襲の機会を窺っていた。
そういえば、おれがヘラヘラしている間に「むしろ古すぎて引くし見ててただただ不快」って先にリベンジしてくれたのもあの人だったっけ。
なんてことを思い出すと、未だに鼻の奥がつんと痛むしイライラもしてくる。
「それに、女の子にキョーミないことはない。ジュンちゃんに興味がないだけで、まひるちゃんのことは好きだったよ」
重陽が不快を隠さずに真横の市野井を見ると、彼もまた喧嘩腰な眼差しで重陽を見上げ返してきた。
「おー。なに。必死だけど」
目を逸らさず、努めて冷静に返す。あの人の背中を思い出しながら。
「そもそもお前、おれがまひるちゃんと付き合ってたの知ってんじゃん。どういう理屈でそういうイジりしてくるわけ?」
「なんなん? 急に」
「別に。誠実になることしにただけ」
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