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私の名前は中静千春(ナカシズ チハル)。
自慢ではないが生まれてこの方16年、一歩も外に出たことがない。と、いうより、病院の外に出たことがない。
いわゆる生まれついての病弱というやつだ。
窓から元気に走る小学生の2、3人の集団。
それを羨ましいなと思いながらも私が外に飛び立つ手段は何処にもない…。
「千春ー。いるー?遊びに来たよー!」
陰鬱な雰囲気の私に無駄に元気な…だが一応病院だと遠慮しての小さな声が届いた。
「…何しに来たのよ…夏海。」
「んー、何しに来たはひどくなーい?せっかく会いに来たのに!」
少し不貞腐れたように告げる私と同い年くらいの少女の名前は美空夏海(ミソラ ナツミ)私の入院するこの病室の隣に入院してきた子だ。どうせここまで元気に過ごしてきたであろう彼女からすれば引越し感覚なのだろうが私に言わせればたまったものではない。
「会いにきたって何よ。お見舞い感覚?あんたも患者なのに?」
自分でも語気が冷たくなっている自覚はあった。
どうせこの子もすぐ退院して私の目の前から消えるのだろう。みんなそうやって消えていくのだから。
「んー、まぁ別にいいじゃん!ねーねー!歳も近いでしょー?お話ししようよー。」
「うるさい。話すことなんかない。」
なんでだろう。この子といると妙に心がざわざわして気持ち悪くなってくる。いや、理由なんかわかってる。ここにいるということは私と同じく何かしらの問題があるはずなのに自分と違い楽しそうなこの子がどうしても気に食わないんだ。
「えーけちだなー。千春は。」
「呼び捨てやめてよ美空さん。」
「私は呼び捨てでいいのにさ。」
冷たくあしらう。もちろん、そんなものは言いがかりに近いとは理解している。だが、どうしてもこのざわつきは抑えられない。
「ねーねー千春はなんで入院してるの?」
「…。」
答えない、、言いたくない。
「ん。言いたくないならいいや。」
「私はね。なんとかって言う病気なんだって。詳しくは知らないけど。」
「自分のことなのにそんな風なの?」
「まぁ別にいいよ。死んでないし。」
笑顔でそんなことを言うこの子にまた腹が立ってくる。
「お気楽なものね。」
「それくらいの方が楽しいからねー!」
調子が狂う。
「あ!私そろそろ検査の時間だから!行くね!」
「何しにきたのよ本当に…。」
「時間まで暇だったから!じゃね!」
そういうとあの子は私の病室から出ていってしまった。なんともまぁ嵐のような人だ。
私と真逆で実に気に食わない。
なのに
静かになったこの部屋に、満足しない何かを覚えるのは何故だろう。
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