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申し訳なさそうに言う鈴木さんの視線の先には洗われぬまま放置された食器がシンクに溜まり、コンロには若干の汚れが付着していた。
「なるほど、これは確かに散らかってますね。鈴木さん、良かったら私片付けますよ」
「いや、それはさすがに申し訳ないから」
遠慮がちに言う鈴木さんに私は笑いながら答えた。
「急須を探すついでということでどうでしょうか? 私、お茶が飲みたいので。ということでここは私に任せてください」
半ば強引に鈴木さんをリビングへ押しやると、食器洗いとコンロの掃除に取り掛かった。ついでにシンクを磨き、見つかった急須を持って鈴木さんに尋ねた。
「鈴木さん、急須見つかりましたよ! お茶の葉どこにありますか?」
「確か後ろの食器棚の一番下にあるけど、あとは僕がやるよ」
そう言いながらこちらへ来た鈴木さんは私の手から急須を奪うと食器棚から茶筒を取り出した。
「うわぁ、きれいになったね! シンクなんてピカピカだよ。ありがとう。あとは僕に任せてそこで座って待ってて」
「お役に立てて何よりです。じゃあ、お言葉に甘えて座って待ってます」
鈴木さんに笑顔を浮かべつつ私はリビングの椅子に腰かけた。
「お待たせ。どうぞ」
鈴木さんの淹れてくれたお茶に口をつけながら私は母に尋ねようとしていたことを聞いてみた。
「そういえば、鈴木さんって普段何してるんですか?」
「え、僕? 僕はね、こういうことをしてます」
そう言って近くにかけてあったスーツの上着から名刺を取り出し、私に見せてくれた。名刺には大手ゼネコンの駿河建設の社名と第一法人営業部部長の肩書がプリントされていた。
「へえ、すごいですね! 大企業じゃないですか! 実は私、就活の時ここ受けたことありますよ。書類選考でダメでしたけど」
「へえ、そうなんだ。そのまま受かってたら会社のどこかで会ってたかもしれないね」
「そうですね、でも私。今の職場気に入ってるので、今は別に残念だとは思ってないですよ」
「ははは、職場が楽しいのが一番だからね。よかったねいい仕事に巡り会えて」
「そうですね。ところでどこで母と知り合ったんですか? 接点があるように思えなくて」
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