Ⅱ 白衣の女神

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Ⅱ 白衣の女神

「――おっす! 今日も早いな」 「ああ、おはよう。まあ、家にいても特にすることないしね」  無音の家とは対照的に、人々の会話や足音、車の走行音…様々な騒音に満ちた街を徒歩と市営のバスで移動し、通っている高校へとたどり着くと、クラスメイトが朝の挨拶をしてきてくれる。  家族達と違い、ここの友人達とは言葉のキャッチボールができるのでとても楽しい……ようやく生きている人間と関わりを持てたような、そんな気がする。 「ねえねえ! この人の新しい動画見た!?」 「え! まだ見てないかも! どれどれ?」 「なあ、この新人グラドル、けっこうよくねえ?」 「いや、俺はやっぱ清純派のこの子だな」  また、教室内には取るに足らない、そんなお喋りに花を咲かせる生徒達の声が、無秩序な交響楽のようになって木霊している……この場所も、やはり家とは違って生活の音に満ち満ちている。  なぜ、僕の家にはあんなにも音がないのだろうか?  家族って、他の家でもあんなに冷めた関係性しかないものなんだろうか? 「ね、ねえ、最近、家族と話とかしてる?」  不意に、その疑問に強く囚われた僕は、思い切ってそのことを友人に尋ねてみることにした。 「はあ? いや、別に普通だけど……なんだ? 家族と揉めてんのか? ケンカか?」  しかし、彼は僕の質問を違う意味にとって、勝手に想像を巡らせると逆に尋ね返してくる。  普通かあ……その〝普通〟って、いったいどんなものなんだろうか? うちの状態は普通なのか? それとも普通じゃないのか?  その〝普通〟のそもそもの基準がわからないので、どんなに考えたところでもうどうしようもない……。
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