フラウリー

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「誰にも言わないでくれよな。俺、宇宙人をかくまってるんだ」  中学から友人の健斗(けんと)が言った。希美(のぞみ)は笑った。こんな冗談を言うなんてからかっているに違いないと思った。健斗は真剣な顔でもう一度言う。 「本当に家に宇宙人がいるんだよ。この地球がある太陽系から来たんじゃないらしい。コピーされたような太陽系がもう一つ宇宙に存在していて、そこにも地球と似た生物のいる星があるんだそうだ。地球より文明が発達していてほとんどが海らしい。いちおう陸もあるとは言ってた。宇宙人は小さなロケットで来たんだ。もう壊れて使い物にならないらしいけどね」  健斗は奥二重の瞼の薄い大きな目を輝かせて言う。希美はマルチーズのようなくりくりした目の目じりを緩めた。目は大きいが黒目がちなので、小型犬を思わせる。希美は面白い話だと思った。エイプリルフールにはまだ早いのに。  二人は高校一年生だ。今は三月なのでもうすぐ二年生になる。健斗はもっとレベルの高い高校に行けたのだが希美に合わせて冨士見高校の試験を受けた。冨士見高校もこの辺りでは進学校で有名だが、健斗は有名大学の付属高校だって余裕で受かりそうな成績だった。その健斗が宇宙人なんて信じるわけがない。希美は笑顔を崩さなかった。面白い冗談だと思った。でも少し付き合ってあげよう。 「宇宙人と会話が出来たの?」 「ああ、フラウリーは翻訳できるタブレットを持っていたからね。入力した日本語が変換されるんだ。その逆も出来る。あ、フラウリーっていうのは宇宙人の名前だ。背が小さくて頭が大きい。鱗がある緑色の身体をしていて魚類から進化したんだそうだ。淡水でも海水でも生きられるらしい」
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