フラウリー

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 健斗はアルミ製の袋に入った三千円の餌を選んだ。錦鯉の餌だ。この辺りは家に錦鯉を飼ってる人もいる。店員は愛想よくおまけも付けてくれた。魚の形をしたキーホルダーだ。  駅に戻って電車に乗る。健斗と希美が住んでる駅までは近い。二人は立ち話をしながら景色を見た。 「地球人が宇宙に行くのに酸素ボンベをするだろう。宇宙人は水が入ったボンベをしてるんだ。でも翻訳機で会話は出来る。訊きたいことを考えておいたほうがいい」 「分かった。宇宙人は男なの?」 「そうだ。十九歳だって言ってた。俺たちより三つ上だな」  健斗は六月生まれで希美は十月だ。宇宙人は十九歳で地球に来るなんてことをしたのか。まだ若いから他の太陽系に来るのは皆んなが反対しただろうに。 「若いって思ってるんだろ。俺もそう思って訊いたよ。フラウリーは小学校のときはもう大学生の問題集は簡単に解けて、コンピューターでプログラムが組めたんだ。中学生からはすでにコンピューター会社の仕事をしていたらしい。だよ」  希美はそんな宇宙人に早く会ってみたい。電車は二人が降りる駅に着いた。ホームに降りて階段を上る。改札を抜けると健斗の家がある方向に向かって歩いた。歩道の花壇に水仙(すいせん)が咲いていた。
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