ドラマーイズインマイルーム

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 部屋の隅っこにある、洋服がかかってる狭い部屋はドアが閉まってるわ。開けといてくれないと、パトロール出来ないじゃない。こういうところ、気が利かないわよね。このドアは何回もチャレンジしたけど、自分では開けられないの。  黒い虫がいても知らないわよ。  とりあえず、黒い虫はいなかったからパトロールは完了。部屋の中はすっかり暗くなった。暗くても平気よ。ちゃんとよく見えるし、匂いもヒゲも物の場所を教えてくれるもの。知哉は目が悪いみたいで、暗くなるとあちこちにぶつかってるけどね。鈍臭いわ。ヒゲくらい伸ばしときなさいよ。  そろそろ、ろくじなのかしら。ろくじは暗くなったくらいだったわよね。  遠くで扉が開いた音がする。耳を澄ましていると、足音が聞こえてくる。  知哉だわ、この足音。あたしは急いで玄関に向かう。ああもう、足が遅いんだから。あたしがどれだけ待ってたのか、思い知らせてやらなきゃ。  ドアの取っ手がガチャリと音を立てて動き、ドアが開いた。 「ただいま、はなー」  あたしの顔を見ると、知哉はにっこり笑う。外から帰って来ると、すごいタバコの匂い。臭いからやめなさいよって何回言っても聞かないのよ。
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