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時は江戸時代
この町は今日も慌ただしい
御用だ!御用だ!御用だ!
隊長!あそこの屋根に!
おい!貴様っ!そこから降りて来い
大人しくお縄に捕まれ!!
ふっふっふ。
そいつは無理な話だぜ?だんな
まだまだ捕まる訳にはいかん!
さらば!!
あっ!!飛び降りた!?
くそっ!回れ回れ!追えー!!!!
はっはっは!今日も大漁大漁!
さてと 晩酌でもするかの
ぴちょ…ん
ぴちょ…ん
…………
ん?
拝啓 あの世のおっかさん
どうやら年貢の納め時が来た様で
天国には行けませんがいつかあの世で
お会いできたら親孝行します
と言うのも
一仕事終えて家に帰ると
河童がいます。
はい。
あの河童です
地獄の沼へ繋がる黄泉への案内人
手土産にお酒とか持っていけば
閻魔様が喜ぶかな?
とまぁ走馬灯はこの辺で続きをどうぞ
ん?
ぴちゃ…ん
ぴちゃ…ん
ん?ん?
…うわっ!!!?
かかかかかか河童ッー!!?!?
ひぃ!ひぃいいいいぃい
すすすんません!すんません〜!!
確かにあっしはコソ泥をしやした!!
ですが良いこともしとります!
差し引き分!
地獄だけはどうか!どうかっ!!
…命だけはご勘弁くだせぇええ!!!
あ…あのぅ
おじさんにお願いがあるの…
はい!何なりとお申しつけ下さい!!
だからあの世には連れてかないでー!!!
あの世?…あの…どんなイメージもってるの?
え?
……
コレがワシと河童の初めて遭遇した日である
いや〜昔から悪人は河童に地獄に引きずり込まれるとおふくろから聞かされて育ったもんでよ
てっきりワシもかと…
はっはっは!いやいやスマンスマン
してお主…名はなんじゃ?
僕、河童のカン太って言います
勝手にお邪魔してごめんなさい
おぉ!カン太か。
で…なんだ?頼み事とは?
あの…おじさんに…
取り替えして欲しい物があるんだ…
取り返す?
うん…僕の頭の皿なんだけど
ほう?
確かに無いな。
どうしたんだ一体?
良い天気だったから
天日干ししてたんだ
そこにあいつがやって来て
おぉ?これは良い皿を拾ったぞ!
がははははは!
あ!待って!それは僕のお皿だよ!?
あぁ?何だ貴様ッ
力づくで取ってみろ!!
ブン!ブン!
うわぁああああああ
って事があって
それはなんとも横暴な奴だの
おじさんが…悪い人達から泥棒してるの
知ってるるんだ
だから僕の大事なお皿も
取り返してくれると思って…
かん太よ。
ワシは正義の役人ではないのだ
何であろうと盗みは盗みだ。
うん。…そうだよね…ごめんなさい。
しかしその皿に興味が湧いた
それにこの町で盗っ人のワシを差し置いて盗るとは大胆な奴よ
おじさん!!
それはそうと…ワシ
まだ20代だぞ?
え!?
…それで。どこのどいつに盗られたんだ?
がはははは!
この橋を渡りたければ身ぐるみを置いてけ!!
ひぃ!ひぃえええーお助けー!!
がはははははは!
なんとも臆病な奴よ!!
うわっ〜
またやってるよー
今月これで犠牲者何人だ?
その者
百貫なる大男 名を弁慶と言う
いつから居たのか
この町に住み着くなり
橋を渡る者に高価な者を強奪する
この町の問題のひとつ
その横暴さもさることながら
腕っぷしも実に破茶滅茶
町奉行すら手も出せず
野放しにされている
おい!そこの坊さん!
この橋を渡りたければ身ぐるみを置いていけ!
…はて?この橋はあんたの物かい?
私はそこの城に用があってな
あんたに構ってる場合じゃないんだが?
がはははは!何とも気の強い坊さんだ!
ならば無理矢理にでも通るか?
…
お、おい!あの坊さんやる気だぞ!?止めろ!
無茶言うな!お前がいけ!
お、おーい!あんたぁ!!よせ!
正面からとは……気に入ったぞ?
お望み通り…ぺしゃんこだなあ!!?
!!!
ピタッ
……何故…避けん?
……ほっほっほ
なーに…あんたがこの端を通せんぼするから
橋の真ん中を通るだけさ
は?
… … … …
ぷっ!
がーはっはっはっはっは!
ますます気に入ったぞ!通れ通れ!!
おい!坊さん!名は何と言う!?
私は一休と言う。
素直に通してくれてありがとよ
器の大きし者よ
そうか。一休か
邪魔して悪かったな
おぉ!やるなあの坊さん!
な、なぁ俺たちも真ん中歩いてみるか!?
よせよ!潰されるぞ!
………うーむ。参ったな
まさか かん太の言ってた奴が弁慶とはの〜
ゴクゴク……ぷはぁ
昼間の坊さん なんて面白い奴だ
今宵は酒が美味いのう!ゴクゴク
ん?
何だ貴様は?
…そのいでたちは
貴様か?名を轟かせてる盗人は?
いかにも。
なんの用だ?って盗っ人に聞くまでもないな
うむ。大事な友からの頼みで
お主から皿を盗みに参った
皿? ああ この皿か
この皿に入れて呑む酒は格別でな
返すわけにはいかんなぁ。ゴクゴク
そうか。なら…チャキ
がはははははは!
まぁ待て!…俺は今日 機嫌が良い。
どうだ?物々交換なんてのは?
物々交換?
あそこの城にある家宝の蝶の印の入った刀だ
お前さんなら余裕だろう?
酒が入ってるとはいえ腕っぷしは変わらんぞ?
お前さんの土俵で勝負するってんだ
悪い話ではなかろう?
それに面と向かって盗みを言われたのは初めだ
お前さんに興味が湧いた
どうだ?
…いいだろう
がはははははは!
今日は正面に縁があるのう!!!
ふー…やれやれ
どのみちあの城にもお邪魔しようと
思っていた…遅かれ早かれだな
憧れと恐怖を形にした
聳え立つ城はこの町の貧富の象徴
やはり城内の警備は万全だな。
しかしこれしき…
闇に紛れ
颯爽と駆け抜け
軽快に空を舞う
その男 名を ねずみ小僧
彼は盗んだ銭等を貧しい町民に配っている
そのため英雄の罪人として崇められる
町奉行は血眼になって彼を捕らえたい
城内侵入完了
さて……宝物庫はどこかな?
なぁなぁ昼間の坊さんの話聞いたか?
屏風の虎を退治したらしいぞ!?
屏風の?ははは
バカ言え そんなこと出来るかよ
けど将軍様が大変喜んでおられたらしいぞ
神に使える業さ…きっと怪しい妖術を使うのさ
そんなことより見張り交代の時間だ
はいよ!
ちゃりーーん
ん?なんだ?
……銭?
⁉︎
ドカッ
うぐっ!?
御免ッ!
な!?貴様ッ……ねずみ小僧!?
ドカッ
ぐはっ……ドサ…
ふー…不意打ち御免よ?その銭は慰謝料だ
とっておけ!
ガチャガチャガチャ
キィイイイ…
お?これだな家宝の刀は
貴様っ!そこでなにをしている!?
むっ!?
しまった
あ、お前はっ!ねずみ小僧!?
不味い!しかし
ぽいっ
ボン!!!?
しゅわわわわわわわ
ぐっ!?ゴホゴホゴホッ!
煙玉!?ゴホゴホゴホッ!
おのれ小癪なマネをっ!
あ!居ない
奴めこの煙に乗じて逃げたか
出逢え出逢えーい!!!
ねずみ小僧が城内に侵入したぞー!!!
ひっ捕らえー!!
さすが、…将軍の城だな
いったい何十人いやがるんだ
人件費の無駄遣いしおって!
ハァハァハァ
こっちだ!いそげ!!!
ま、不味い
こっちに来る……これまでか!?
こちらに入りなさい。
!?
ドタバタドタバタ
…………
こんな夜分に何事かな?
これはこれは一休様 申し訳ありません
今しがた城内にねずみ小僧侵入しまして
ほう?あのねずみさんが
…失礼ですが部屋を見せていただきたい
先程そちらに逃げ込んだ可能性があります
…そちらの布団の中は何か
入っておられる様ですが?
ふぉふぉふぉ
なーに昼に退治した虎が寝ておる
と、虎が!?
そんなバカな事がっ
し、しかし一休のことは
城内でも話しが持ちきりですよ
将軍様も喜んでおられましたし
どうした?ひそひそ話して
今しがた寝かしつけたとこにお主たちの
騒動で目が覚めるかもしれんな
今起きて暴れられたら手に負えんのう
し、失礼しました!
ご無礼お許しくだされ
向こうに行くぞ!
ドタバタドタバタ
あー?これこれ
もう少し静かに追い回して貰えないかな?
虎が起きてしまう
…行ったぞ
ふー…助かりやした!!
おや?あんた確か昼間見かけた
坊さんじゃ?
でも…どうして盗っ人のあたしを助けたんで?
ふぉふぉふぉ
なーに お主が捕らえられたら
困る人がおるじゃろう?
へへ。どうやら借りができちまったようで
僧侶様 この借りはいつか必ず
ふぉふぉふぉ
なーに 気にせんでよい
こっちも儲けたわい
?
…では。失礼
お?来たな!
ほれ!約束の刀だ
おぉ!流石だな
よし!約束通り交換だ
ひとつ聞きたい
なんだ?
その刀…家紋が違う
あの将軍の家宝ではないのだが
…いかにも
これは俺の家系から代々引き継がれてる
家宝の刀だ
昔 俺の住んでた村が戦いに巻き込まれてな
家族も殺され 貴重品も全部盗られた
俺は全国各地を回り家宝の刀を探していた
そんな時だ。この町の刀の話しを耳にしてな
美しい蝶の家紋が入った刀を将軍が持っていると
その刀と見合う物を物々交換しようと思っておった。
だが中々高価な物に出逢えずにいたところその皿を手にしたのだ
ところがその皿の魔力たるや
何とも美味な酒の味よ!
手放すのが惜しんだのだ
やれやれ
まぁ直ぐに交換せずいてくれて良かった
ワシが言うのもなんだが強奪するとは
それに お主 妖とは言え
いくらなんでも子供から奪うのはな〜
すまんのう
お前さんから謝っといてくれ…
おぉ!そうだ河童の小僧にこれを渡してくれ
?
釣竿?
うむ。旅の道中に爺さんから頂いた釣竿だ
名はなんだったか
確か 浦島太郎 と言っておったな
よく魚がかかる名竿だ!
ほう!それはあの童も喜ぶだろうな!
お主 中々義理が硬いのう
がははは!お互い様だ
どうだお前も一杯?
うむ少し喉が渇いておった
貰おう
おぉ!確かにこの皿で呑む酒は格別だの!!
確かに手放すのが惜しいわい!
がはははは!だろ!
おぉ…そうだ。城内に坊さんがおったか?
うむ。おったぞ
借りを作ってしまった。
借りを?
わっはっはっはっは!
成る程成る程!
あの坊さんらしいな!
しかし、。あの坊さん。
只者ではないぞ?
どういう事だ?
あぁ…昼間に一度会ってな
その時もトンチを利かせておってな
俺が仕掛けた時
あやつの歩きが変わった
あれは…忍び歩きだ
ねずみの小僧よ。お主も習得しとるだろう?
普段の生活では隠しておっても
体に染み込んだ癖だ
出ちまう時がある
俺が棍棒を振りかざす瞬間
奴との間合いが一瞬で変わった
ただの坊さんではあるまいよ
さてと…俺はもうこの町には用はない
今夜旅立つ。また縁があれば会おうぞ
…………
どうしたねずみの小僧よ?
う、うむ。そちの話に夢中で
気付くのが遅れたのだが…
ん?おぉ!それは千両箱じゃないか!
抜け目のない奴め
う……うむ
何やらいつもと感覚が違うのだ
あっ!?
い!石ぃ!?
中身がすり替わってる!?
あの坊さん…まさか!
はっはっはっは!
やはり只者ではないな!
夜が明けた城内
ど!どーゆ事だこれは!?
ほ…宝物庫が空っぽ!?
な、何をやっとる貴様らー!!!
し…しかしっ!
ねずみ小僧にあの量の宝は
持ち運べないはずっ!
し!失礼しますっ!!
何事だ!?
後にしろ!!!
い、いえ!それが…客人です…
客人?
誰も招待しとらん!!!!
いえ…それがその……一休です
は…はぁ!?
い!一休だと!?
なにをバカなことを!?
奴なら居るではないか!!!
そ…それが一休様のいた客間は
間抜けのからでして…
はぁ!?
ぐぬぬぬっっ…
これはいったいどーゆ事だ!?
説明せんかぁあああ!!!
町から離れたとある峠
ふぉふぉふぉ
ねずみ小僧よ
お主がのおかげで楽に儲けたぞ
礼を言う
ふー……さてつぎはどこの町に行こうかな
その男 数多の顔を持ちよりし天下の大泥棒
名を 石川五右衛門
…風さん。おいらを誘っておくれ
拝啓 あの世のおっかさん。
ワシは盗っ人を始めたのは
おっかさんの病を治したかったからだ
間に合わなくてごめんよ
けど貧しい町民のために
ワシは盗っ人を続けるよ
それがワシの正義じゃ
おぉ!それとな
うちに河童が遊びに来るぞ
聞いてた話とは大分違っておる
とても地獄とは無縁な奴よ
毎日魚を釣っては一緒に食べて
今ではすっかり懐いてウチに在る
知っておるか?河童の皿で呑む酒は格別だ
たまに拝借してはケチつけてきおる
もしあの世で会うことがあったら
その時は親孝行させてくれよ
おじさーん!
魚釣ってきたよー!一緒に食べようー!
時は江戸時代 京都
この町は今日も賑やかだ
妄想幕府 エピソードオブねずみ小僧
英雄の罪人
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