輪唱

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輪唱

 輪唱(りんしょう)。  亜空(あくう)に揺さぶられた衝動。  制服の(すそ)に掴まれ。  輪唱(りんしょう)。  けたけたけたけた、ここに皆が居るよ。  胎児(たいじ)の夢と(つい)なす好奇心の実証。  現国(げんこく)で知る奇石(きせき)コンクール。  地方都市の街灯(がいとう)ディスプレイ、映画でもいかがとすぐさま連想。  すずなりに並んだ教室の窓、(いや)しい顔がからかいだす。  ようやく(のが)れ、  独り言。  吸い込んだ湿気(しっけ)香料(こうりょう)、七、八月特有。  輪唱(りんしょう)。  けたけたけたけた、けたけたけたけた。  制服の(すそ)(つか)まれた腕の記憶、(あばん)につけたキーホルダーの、(すず)(おと)。  記憶、止血法(しけつほう)のごとく、痛みと共に、焼き切れ、つんざけ、あぶら差せ。    
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