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「そういえば星羅、あのふたりが付き合ってるの、いつ気づいたの~?」
中庭を臨む屋根の下のベンチに座って雨宿りしながら、
真子と私はコーヒーを片手にくつろいでいた。
あれ以来、業務の合間に中庭で駄弁るのに味を占めてしまった私たちは、なんだかんだ週に1回は暇なタイミングを見計らって此処にいる。
もちろん、言い出したのは真子だ。
1日に1杯、きめ細かい泡のたったカプチーノを飲めるだけで、幸福度は確実にあがっていると思う。
あるいは、珈琲の有無は全く関係ないのかもしれない。
自由気ままな彼女といるときは、強ばった肩がすとんと落ちる気がする。
今日のように霧雨が降っていても、冬の気配が漂う風が冷たくても、病院の中にいるよりずっと息がしやすい。
「ああ、えっとね。……いつだったかな。少し違和感があって」
点滴台を持って歩く患者と、患者の腰を支えて歩く理学療法士が目の前を通りかかり、お互いに軽く会釈する。
感染拡大を憂慮して病院全体が面会謝絶の状態だからか、リハビリ中の患者を除いて人通りのない中庭は閑散としており、何十分居座っていようと、誰かに訝しげな目を向けられることは一切なかった。
コロナウイルス流行は、甚大なマイナスと共に、ほんの少しのゆとりを私たちの日常に与えてくれている。
「私も途中で、ん?って一瞬思ったけどあんまり深く考えてなくて。結局最後にネタバレでびっくりって感じ〜」
「……うーん、ほとんど妄想かと思って全然言ってなかったんだけど。《Acuario》で悠馬さん見たときからかな、あれ、もし付き合ってたら辻褄合うかなって」
推理でもなんでもない。
観察と、推測と、ちょっと行きすぎた想像のフレーバーに酔っていただけ。
「悠馬さん、右耳にピアスあいてたから。1個だけ。」
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