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私はその次の週から動き出した。私には中学から同じ高校に進学した特に親しい友達が二人いた。一人目が瞳だ。瞳はクラスの中心人物になりやすく、中学のときはクラス替えがある度に、その座にいつの間にか着任していた。彼女はSNSにめっぽう強く、最新コンテンツから中高年にも人気の高いメジャーコンテンツまで、幅広く使いこなしている。しかし、その使いこなし方というのが、決してインフルエンサーということではない。彼女の得意分野は追跡だ。文章はもちろん、アカウントのフォロー関係、写真からあらゆる秘密を暴く。彼女に浮気を嗅ぎ付けられた女友達の彼氏は多い。瞳は一つ一つ解決するごとに名声をあげ、地位を築いていった。彼女は解決後の女子たちへのフォローがしっかりしている。瞳に依頼した人物は事件後には彼女のファンとなっていた。
私は当時名前も知らなかった彼のことを瞳に伝え、大手ドーナツ販売店の有名パティシエコラボ商品を対価に調査依頼を始めた。二人でドーナツ屋に居座ること一時間弱、私は彼の名前と出身校を知り得ていた。それからも瞳とドーナツ屋の新メニューを囲っての集会は続いた。あいにく、意中の彼はSNSのアカウントをほとんど所持していなかったが、彼のサッカー部の取り巻きたち、中学のクラスメイトたちはオンライン状に様々な情報を残していた。彼の名前は高校のサッカー部員のアカウントに部員集合写真があり、そのアカウントのフォロー関係から、写真の一人一人を調査、排除していき、消去法から判明した。道中のサッカー部員たちのアカウントから、同じ中学の人間を見つけることができ、中学も判明。そのアカウントの繋がりで中学時代のクラスメイト、その繋がり合いも推測ながら掴みとることができた。彼の通ったスイミングスクール。彼が友達と通ったファストフード店。遂には住所や、引っ越し前に通っていた小学校にもたどり着いた。彼の友人界隈から、彼のつるむ友人の間ではプロ野球観戦に出向く趣味があることもわかった。私は情報を集めながら作戦を練っていく。
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