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私のもう一人の昔馴染みの友人に健一がいる。健一とは幼稚園からの付き合いだ。私が彼にであった頃、健一は必ず入部しなくてはならない部活動を決めかねていた。私が協力依頼として冗談でサッカー部を勧めると健一は何も言わずに翌週、サッカー部へ入部していた。私も部活を決めかねていて、私がサッカー部にマネージャーとして入れないか調べたところ、流石強豪校、むしろ女子サッカー部が存在して、どちらもマネージャーなる役職は募集していなかった。男子サッカー部と女子サッカー部はグラウンドも分かれていて絡みが全くない。私は拘束時間の縛りが弱い美術部に在籍することにした。健一からの情報は今の部活動内の雰囲気を伝える物で、テレビで言うなら生放送といえる内容だった。私は瞳から彼の過去を、健一から彼の現在を収集することができた。ただ、問題だったのが、健一との密会だ。街中を二人で歩く訳にはいかず、まして昔のようにお互いの家に行くことも難しい。瞳もそうだが、ネットワーク社会、どこに目があるかわかったものではない。そこで予想外に役立ったのが美術部員の立場だ。私は人物画を専攻することで、モデルを人に頼むことができた。他の部員は部員内からモデルを選ぶことが多かったが、男性を描くには人材が少なく、まして筋肉質なモデルは一人として美術部に在籍していなかった。私は昔馴染みの健一を推薦し、作品を創作する形で二人の時間を確保した。部員のなかには風景画をメインに取り組む人が多かったこと、女性モデルと男性モデルで部屋を分けたこと、健一がサッカー部の活動と並行するため、他の部員と時間がずれることなど様々な偶然も重なり、上手く時間を作ることができた。健一は昔馴染みということもあり、報酬なく手伝ってくれていて、本当に感謝しかない。
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