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私の進めた作戦は順調だった。健一が、サッカー部のなかで少数派だったプロ野球観戦の趣味の話を彼に持ちかけ、少人数での試合観戦にこぎ着けたこと。彼がよく利用するファストフード店での再会。私の美術部の課題としてでた美術館の訪問とレポート作成に二人で行く約束。美術館デートでは、瞳と健一が裏手でサポートに立ち回ってくれた。瞳には美術館あとのご飯場所のリサーチ。健一にはデートの練習につきあってもらった。そのデートの中で瞳から聞いていた、彼が中学時代行きつけだったもんじゃ焼き屋の話を匂わせ、彼から誘ってもらうことにも成功した。もんじゃ焼きを知らなかった私は、健一に学校でバレないように作ってもらった。先生に見つからないようにヒヤヒヤしながら、家庭科室で実施した。お互いに家から材料を持ちより、健一が家から持ってきたホットプレートで調理した。幸い先生に見つかることはなかったが、かなりドキドキした。健一がどうしても一回作って練習しておいた方がいいと言うからやったものの、味はイマイチでおかしかった。幸い練習のかいもあり、彼から、「料理上手いんだね」とお褒めに預かることができた。そんなデートを繰り返し、時は流れて二年生のバレンタイン。瞳に流行を聞き、健一に何度も試食してもらいながら、作り上げた私の最高傑作。明日のデートで全てが決まる。三個作った作品のうち最も形の整ったものを彼に渡す予定だ。作品を冷蔵庫に納め、明日のことに胸を踊らせながらベッドでぬいぐるみを抱き締める。ベッドで何度も右へ左へ転がるうちに、枕元のスマホに着信が入った。彼からかもしれない…!そう思い心拍の高鳴りを感じながら確認する。
「あれ…」
私の青春は始まったばかりだ。
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