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「カーター先生、今度の日曜日にパーティーやるって本当?」
私のもとに急いで来たのか、少年の呼吸は乱れていた。
「あぁ、本当さ。町の皆で集まってパァーッとね。
よかったら、親御さんと一緒においで」
「うん! そうだ、友達も呼んでいい?」
「いいとも。パーティーは人数多い方が楽しいからね」
「先生、ありがとう! またね!」
私は家路につく健気な少年を手を振って見送った。
人間は単純な生き物だとつくづく思う。
何しろあの少年はすっかり私を善良なる人物と捉えていた。
他の住民もほとんど同じで、私と合わせる顔はもれなくにこやか。
怪しむ素振りは全くと言っていいほどない。
田舎町に唯一の病院を開業するだけで、この待遇である。
今回のパーティーは、地域住民への感謝という名目での開催。
恐らく子どもから老人まで町のほとんどの人たちが参加するだろう。
彼らは表の私しか知らない。つまりは、警戒などするはずがないのだ。
当日、本来の私が牙を剥く可能性は決して否めない。
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