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「おまえ、血の気が多すぎるんじゃないのか? 今度献血でもしに行く?」
「そういうぼんだいぢゃ、だい」
鼻を抑えられているせいでまともには聞き取れないが、一応“そういう問題じゃ、ない”と新田にはちゃんと聞き取れたらしく、
「じゃあ何? 俺の裸見て興奮でもしたってわけ?」
さらりと笑って言ってのける。
「…………」
冗談で言った新田の言葉に、まさしくその通りである野代は赤くなって目を閉じた。
「ふーん……変態?」
新田は眉を顰めて漸く野代の大きくなった下半身のソレに目を向け、冷ややかに言い放った。
「だって……」
「俺、そんなに魅力的か?」
どうも、新田の反応も少しずれている。
野代はそう思いながらも、こっくりとうなずいた。
「俺、新田どごど、ずぎだんだ……」
ああ、何と言うみっともない告白だろう。
流れ出る鼻血を抑えられたまま、という世界でも稀に見る情けない告白シーンに、野代は泣きたくなった。
「……まじで?」
「ばじで」
暫く沈黙は続いた。
野代の頭の中では、もうどうにでもなれという開き直った自分が新田の返事を待っていた。
何しろこの状況である。
大好きな新田の裸を見て、完全に勃ち上がってしまっている自分のムスコは、タオル一つない全裸という格好では隠しようがない。
今まで散々「好きだ」「愛している」などと口走っていたものの、どの言葉も新田が本気でとっているわけがないことは十分承知している。
だからこそ自分たちはこうやって友達でいられたし、あまつさえ同居する、という非常に嬉しい提案まで共有することができたのである。
それが、この状況と自分の真剣な告白に、新田が退かないわけがない。
お試し同居三日目にして自分はきっと新田に切り捨てられるのだろう。
そう思うと、今の自分にはどうしようもなく、開き直るしかなかったのだ。
「……とりあえず、さ。風呂上がって、血を止めるのが先かな?」
しかし新田は沈黙の後そんな風に冷静に言い、野代の頭をそっと持ち上げた。
そして何もなかったかのように脱衣所に置いてあるタオルで自分の身体と野代の身体を拭くと、野代の鼻をタオルで抑えたまま着替えるように野代に言い、自分も手早くパジャマを着て、リビングへ行ってしまった。
「……新田……」
野代は呟いて、もそもそとTシャツと短パンを身に付けると、新田の待つリビングへと向かう。
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