ふわふわカレン

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ふわふわカレン

 うちには妙な毛玉がいる。  それだけ聴くと、何か動物でも飼っているの?と思われることだろう。厳密には違う。その毛玉のようなものは、家のテーブルのド真ん中、明らかに邪魔な位置に鎮座している物体だというのに――正体もわからなければ、私以外の誰かに見える様子もないのである。  茶色の、毛に覆われた楕円形の物体。  正直、私にわかっていることはそれだけだ。 「えー、ナニソレ?」  駅から高校へ向かう道中。友人のエリカに話すと、彼女は笑いながらそう答えた。 「マナ、そういうの見えたっけ?えっと、幽霊とか妖怪とかそういうの。霊感少女だったなんてびっくりー」 「からかわないでよ。私だって意味わかんないってなってるんだから。人生で一度もオバケとか見えたことないのに、急によくわからないもんに居座られるようになっちゃって」 「ふーん。それ、なんかやばい虫とかじゃないよね?毛虫みたいなやつ。聴いたことあるよ」  面白いものが大好き、おかしな動画ばっかり見ている変人のエリカは、言いながらぞわぞわ、と両手の指を動かしてみた。一体何のジェスチャーなのだろう。 「触っただけで毛が指に刺さって抜けなくなるやばい毛虫とか。あと、ほんのちょっと毛に触れただけでやばいくらい痒くなってかぶれる毛虫とかいるって聞いたよ。なんか、マナの話聞いてるとそういうものに外見が近いような気がするんだけど?」  言いたいことはわかる。というか、私もちょっとそう思ったのだ。なんせ、一番最初にテーブルの上に出現した時は、私の親指の先くらいのサイズしかなかったのだから。しかし。 「確かに見た目はそうだし、最初はほんとでっかい虫くらいのサイズだったよ。でも絶対違うでしょ」  そいつは、ずっとテーブルの上にいる。私が見ると、必ずそこが指定席と言わんばかりに居座っているのだ。そして、日に日にサイズが大きくなる。最初は親指大だったサイズが、今では私の拳二つ分くらいの大きさんあってしまった。まだ見かけるようになってから、一カ月と過ぎていないというのに。  何より。
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