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「ごめんな。今日は俺と約束してるんだ。また今度誘ってやってくれ。……じゃあな早苗。終わったら連絡くれよな。」
あたしの肩から名残惜しそうに手を離し、マーケティング部のオフィスから去っていく。
…あー、まだドキドキおさまらない。
よく真鍋さんの隣で二週間も仕事できたな…。
気持ちの変化って、すごいなぁ。
「……アレは絶対牽制に来たと見た。」
いつの間にか側へ来ていた野村部長が腕を組んでニヤリと微笑んでいる。
「あっ、部長もそう思います?」
人差し指をピッと立てて、得意げな原さん。
「と、いうことは原さんにもそう見えたんだね。『俺のだ、手を出すんじゃねぇオーラ』っていうの?アイツ、あの見た目でヘタレで一途だから。水谷さんをとられたくないんだろうな。」
野村部長は、自分の言葉にうんうんと頷いている。
……あのー……
うれし恥ずかし?
なんだか、ものすごーくこの場から席を外したい心境なのですが……
……しかし、そういうわけにもいかず……。
先程のくたびれた原さんから一転、キラキラと輝く笑顔の原さんへ……。
……なんだか嫌な予感……
「水谷さん、いつなら空いてますか!?水谷さんの予定に合わすので、絶対飲みに行きますよ!そして根掘り葉掘り……ふふふ。」
原さん?
本音がもれてるよ?
それに、アレよね?
コレはあたしと真鍋さんのなれそめを話せってことよね?
「面白そうだね。真鍋引きずっていくから参加してもいいかい?」
「部長、もちろんです!」
……あぅ……
部長まで………
当事者そっちのけで話が進んでいく……。
……私の話なんて、何がおもしろいの?
………はぁ…。
私は現実逃避しようと大臣の木箱からはちみつの飴ちゃんを取り出し、そっと口の中へ入れたのだった。
おまけ・END
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