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「どっかで落とした?……朝は鍵かけてカバンに入れて……」
思い出せ……、思い出すのよ……
朝鍵閉めて、徒歩二十分の道のりを歩いて会社へ。
自社ビルの五階の一画が私が勤務してるオフィス。
自分のデスクに着いた時……
キーケースに家の鍵とデスクの鍵をつけているのだけど、キーケースの金具が壊れたみたいで、家の鍵だけがカバンの中で遊んでて……
なくさないようキーホルダーでもつけようと思って、デスクの引き出しにいれて……
「あっ……」
そのまま忘れてた。
……と、いうことは、家の鍵は会社のデスクの引き出しの中で……
「……最悪」
会社、閉まってるかもだけど……、たくさん部署のある大きな大企業。
まだ残業してる人もいるかもしれないし、ダメならいるであろう警備員さんに事情を説明してオフィスの鍵を開けてもらったら、家の鍵を手にすることはできる。
「はぁ…。」
片道二十分の道のりを私はてくてくと歩きはじめた。
会社の、自分が働いているオフィスに到着したのはいいが……
……はぁぁぁ……
……今日は厄日?
つるりとした頭の芸人さんが、『なんて日だ!』なんて叫んでる映像が頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え。
現実逃避をしようにも、現実しか見れず、私はオフィス入り口の手前の物陰で頭を抱えて隠れるようにしゃがみこんていた。
『あっ……、あん…………んんっ…、』
高い女の人の嬌声に、パンパンと規則正しい何かを打ち付ける音。
『んっ…ん………イイ。』
欲情を纏った男の人の声。
『もう……イキそう…?』
『やっ…、ぅん………ああっ』
………オフィスに入るに入れない。
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