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オフィスに入ろうとして、私の先輩と後輩が真っ最中のところに出くわしてしまった。
向こうさんはコトに夢中で私に気がつかず。
私はその光景を目にした瞬間、オフィスからすぐさま後退し、オフィス入り口の死角となる今の場所に身を隠して……
現在に至る。
オフィスの自分のデスクへ行かないと、自分の家へ帰れない。
でも、真っ最中のところに「おつかれさまでしたー」と乱入する度胸もない。
時刻は八時半。
……いつ終わんのよ……
そもそもどうしてオフィスでヤッてんの?
ラブホテルでも、どちらかの家でも場所はあるでしょーに。
見たくもない、聞きたくもないものを目の当たりにされるこっちの身にもなってよ……。
「……はぁ……」
小さくため息をついた時だった。
少し離れた場所から足音。
……いっそのこと、この足音の人に真っ最中なのを見つかってしまえと念じつつ、私は死角の隅っこで膝をぎゅっと抱え込んだ。
足音の人も、わざわざこんな死角の隅っこに目を向けることもないだろう。
盛り上がっている二人と、足音の人から身を隠すよう気配を消して息を潜めた。
足音の人がここから離れていったら、ひとまず私もここから離れよう。
余計なトラブルは避けたいし。
盗み聞きしてるなんて思われたくないし。
そう思って、抱えた膝の上に頭を乗せ、顔もしっかり伏せてじっと息を潜めていたのに……
私のすぐ側で足音が止まった。
「何してるんだ?」
明らかに私にかけられた声。
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