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温かいあなたたち
最初に見たときは、ああこんなにも顔が整っている人は初めて見たと、案外冷静にそう思った。肌が白く、透き通った彼女に僕は意識も眼も、何もかも止められてしまう。別に話すことはなかった。周りの友達はその子と仲良くしていたけれど、なんだか僕は近寄れなかった。何かが僕と彼女を隔てている気がしたから。
それが何かは、後でわかった。
毎年この時期になるとテストが終わる。大学のテストは難しい科目と簡単な科目で落差が激しいから困る。さっきのテストはかなり酷かったように思う。初落単も近いか。そんなことを考えながら大学内のフリースペースに移動をしていると、そこにあの彼女がいるのが目に入った。
近くに荷物を起き、話しかけてみた。さっきのテストはどうだったと。彼女の反応は冷ややかなものだった。おかしい。他の人と話している時とは魂が違った。冬も窓に遮られ終わりかけているというのに、彼女との間には冬という形のないものが可視化できるように思えた。
冷ややかな返答を自分の頭の中で反芻しているうちに、彼女はこういった。
「分かるよ、あなたがすごく冷たい人だって」
なんだ、?
「見ていたら怖いほどくっきり分かるよ。あなたの周りがとても温かくて、あなたに伝えないだけで。あなたの冷たい本心は、あなたの周りの温かい心の中でより一層際立ってる。」
彼女がいつも着けているターコイズが使われたブレスレットがいつもより凄く青かった。
そのブレスレットが凄く好きだった。そのブレスレットがいつも目に入っていた。
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