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―――懐かしい夢を見た。
まだ未熟だった頃の淡い記憶。
私は何を質問し、アイツは何と答えのか……。
ぼやけた視界は見慣れた天井を映していた。
聞きなれたアラームが鳴り響き、起床の時間を知らせている。
……ここは私の部屋か。
そう気が付くのに、時間はかからなかった。
枕元にあるはずの眼鏡を取ろうと潜り込んだ布団から手を伸ばし、ふと自分が何も身に着けてないことに気が付いた。
普段なら着ているはずの浴衣は見当たらず、近くには昨日着ていたスーツが脱ぎ捨てられ、見覚えのある男の服と一緒に散乱している。
よく見ると昨日とは変わり果てた姿のタイツも一緒だ。
確かに昨日は仕事で嫌なことがあって、いつもの店で飲み続けていた。
そこで見たくもない顔を見て……その後の記憶があいまいだ。
―――現実の方が悪夢だ。
隣で呑気に寝息を立てている裸の男を睨みつける。
怒りに任せて叩き起こそうかと思ったが、今の自分の姿を見せるような迂闊なことは避けたい。
男を起こさないように布団から抜け出すと、クローゼットのハンガーにかけてあった仕事着のシャツを手にし朝の支度にかかる。
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