氷の女王と野獣

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 冷蔵庫の中身を確認すると昨日の夕飯になる予定だったサケの切り身が目に入る。  アイツは肉の方が好きだったが、文句を言いながらも腹が空いていれば食べるだろう。  一枚を半分に切り分け、グリルの中に入れる。  朝食用に買い置きしている即席の味噌汁のワカメと豚汁をお椀に入れ、ポットのお湯を注ぐ。  確か炊飯器にも夕飯で食べる予定だったご飯が残っていたか……。  少し乾いているかもしれないが、食に無頓着な男にはちょうどいいだろう。  二人分をそれぞれのお椀に盛ると残りはラップに包む。  朝食の準備を終え、着替えと後片付けもすましたがアイツは未だに起きてくる気配のない。  ―――仕事がないのは分かるが、こちらが仕事だというのになんてのんきな男だ。  考えれば考えるほど腹が立つ。  食事用のナイフを手にし、ふすまを開けて寝室へ戻ると朝のときと変わらず寝息を立てている赤い髪が目に入る。 「蘇芳、勝手に上がり込んた挙句、昼まで寝ているつもりですか?いい加減、起きてください。」  もぞりと動くとその男……蘇芳は舌打ちをし、めんどくさそうに起き上がってぼんやりと周りを見渡している。  どうやら、私の声でここがいつもの寝床ではないことに気が付いたようだ。 「……ああ?さすがに女の部屋に勝手に上がったりはしねえよ。」  まるで自分に比がないかのような物言いだ。
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