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もうすでに深夜になっていた。
私は今日もこんな夜遅くにオフィスに常駐しているが、あの人が戻ってくる気配はない。
ただ私は取り残されているだけ…
正面にあるオフィスの窓から、都会の夜の風景が不意に見えた。
誰もいない無機質なビル街が見える。
その上には漆黒の夜空が広がっていた。
動きを止めたような、冷厳な都会の夜の風景。
その寂寥の風景は、まさに私の孤独そのものに思えた…。
その時、不意に、夜空の遠くの方に、微かに光るものが見えた気がした。
遠く空に、何かが浮遊していた。
だがそれは、いつの間にか、私の方に近づいてくる気がした。
それが一体何なのか、まるでわからなかった。
"それ"はついに、窓をぶち破って、オフィスに入り込んできたのでかなり驚いた。
そして、"それ"は、いよいよ私の目の前までやって来た。
"それ"は、
傘という傘の大群だった。
相当数の傘の群れが、何故か深夜の夜空に浮遊し、オフィスの窓をぶち破って、私の前に現れたのだ。
何が何だか、さっぱり訳がわからない。
だが傘の大群は、いつの間にか私を取り囲み、私を一気に連れ去った。
訳がわからぬ私を乗せた傘の大群は、いきなり漆黒の夜空に突入し、都会の夜空高くに舞い上がったまま、ひたすら飛翔し始めたのだ。
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