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物語の森に眠る少年
くすんで色あせた本。
もとは美しい翡翠色だった。しかし今では見る面影もない。それでも、神崎語にとってそれは永遠に共にあるべきであろう存在だった。
天窓から零れ落ちる陽光。
床の上に散りばめられた本。
神崎語は本に囲まれて、まるでお伽話に出てくる眠り姫のように深い眠りについている。寝室もちゃんとあるのだが、月に二回くらいしか使わない。それ以外は“物語の森”と自分で呼ぶ、書斎でいつも睡眠をとっている。
本を傷ませないように、窓は特殊な硝子張りになっている。それ以外にも本中心に考えた暮らしを詳細に伝え、この家を作らせた。人間のためというより――もはや本のためである。
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