君の温度の感じ方

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「どう?試してみる?」 「なっ………!!!!」 何言い出すんだ、こいつは…! 「してみればわかる訳だから、ボーナス問題。」 「そ、そうだとしても、な、なん…!」 何と返せば良いのか、全くわからない。 冗談なのか?それとも本気なのか? 本気だったら、俺こんな場所に二人きり、というのはまずいんじゃないのか?そういう方向は、申し訳ないけど!!別に興味ないんですけど!! 館内は暗く、目は合っているものの、その男の表情までは読み取れない。 どう答えたら良いんだ、落ち着け俺。 自分から罠にかかりにきた、そんな状況になっている可能性があるかもしれない、というわけだ。 ん? なんだか向こうから距離、が、近づいて!?きている!? ちょちょちょ…… 試すの!?試す気!? いやちょっと、ま、ま、 「まっ……!!」 待ってくれ、と言いかけたその瞬間、 記憶に新しいあの感触を、再び味わうことになった。 額同士が、触れ合っている。 目をつぶるタイミングも逃してしまった俺は今、超がつく近距離で、この男と、見つめ合っている。身体は、時が止められてしまったかのように、動けない。 綺麗な、目だな、と、思った。 そして、少し前にこの男が言っていた、額で感じる温度差というものが、少しわかった気がした。きっと今は、俺の体温の方が、高いのだろう。それが何となく感じられる。 「俺はさ、相手の温度を上げていくのが、結構好きなんだよね。」 額同士が触れ合ったまま、彼が話し出した。 柔らかな低音で、心地よい声だと、俺は思った。 「ボーナス問題の答えは、キスはできる、けど、今はしない。」 「…。」 俺はますます、何と答えて良いか、わからなくなった。 嫌な気持ちは不思議とないのだが、それがどういうことなのか、自分でも言葉にして説明はできない。もしかしたら、ただのショック状態で鼓動が早まっているだけなのかもしれないし、あまりにも異性との接点がなさすぎた結果、おかしな夢を見ているのかとも思えてくる。 でも、もしそうではないとしたら、この感情というのは…。
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