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「で、最初の問題の答えは、直腸、でした。」
「直腸…」
「放熱が少ないから、最も体内深部温に近い、とされているらしい。」
「はぁ…腸っすか。」
俺は既にオーバーヒートを起こしそうな頭で、腸の温度の測り方をふと考えた。
「試してみる?」
「…はっ!?」
「冗談だよ。」
彼は俺から額を離し、顔をくしゃっとさせて笑った。
「本当は、人間の表面の温度より、もっと深い部分の温度を知りたいなと思うときが、あるよな。」
彼が呟いた。
「深い部分って…どこの話…」
完全に頭の中が別方向に向かい動揺している俺に対して、
「深い部分、相手の感情の温度を、ね。」
と、彼は少し切なげに、でも真っ直ぐに俺の方を向き、その言葉を投げかけた。
その表情は、暗闇の中で、信じられないほどにとても美しく見えた。
彼の願う温度に達する日が来るかどうかはわからないが、『関わると面倒になりそう』な、この男に、関わってみるのも悪くないかもしれない、と、俺は思ったのだった。
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