私は愛を嗅いでいた…

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私は愛を嗅いでいた…

私は愛を嗅いでいた… R子は両足を閉じ右手でそれを塞ぎ、左手で両胸を覆いかくすという、定番である無駄な抵抗の恥じらいポーズで、体を小さくくねらせていた。 「R子さん、キミがそんなみっともないザマを晒して、どんなに恥ずかしいか我々にはよーく伝わる。こんな辱め、生まれて初めてだろうが…」 W氏は淡々とした口調でR子にぶつけた。 「じゃあ、リビングに戻るわよ!」 「はい…」 U子の先導で、R子は恥じらいポーズのまま、何ともぎこちない足取りでリビングに戻ったのだが…。 「あっ…、いや‥」 何とリビングのテーブルには、Y氏らしき中年のやや太った男が、煙草を咥えて座っていたのだ…。 *** 「何やってるのよ!さっさと入って、ソファの脇に”気をつけ”して立ちなさい。両手は腰に当てるのよ!」 R子はもじもじしながらも、言われた通りソファの横に立つと、姿勢を正して気をつけの姿勢をとった。 ちょうど約3M先正面のY氏と席に戻ったW氏には、胸も何も丸見えというポジションンだった。 さすがにR子は、初対面の男女3人を前にして丸裸になっている今現在の自分を意識すると、頭がぼうっとして、どうやら性的興奮状態にいたっていたようだ。 それは恥辱という自意識…。 どんなに惨めでみっともない格好であろうが、少なくとも、この部屋の中にいる4人のなかで、明らかに注目を浴びる人物は自分なのだ…、と、そう悟ったことで、R子のなかでビミョーにマインドチェンジが起こったのだろう。 そしてそれに体も反応し、彼女のカラダは芯が熱くなってくるのだった。 *** 「R子さん、あなたは愛というものを心から感じること、それ、無意識に避けてきたのよ。いつも隠れたところの大上段から覚めて見下ろしていた。そして他人の紡いだ愛を嗅いでいたのよ!そんな下劣なマネ、よくもその年まで続けてこれたものね‼」 「ああっ…、す、すいません…」 R子は俯きながら半べそ状態でぼそっと懺悔した。 「こうやってゼンブを晒して、あなたは気づいたはずよ。身も心も自分をオールでさらけ出すことで、相手の気持ちやそれを受け止めることのできる手ごたえを。どう?」 「はい…。その通りです…」 この彼女は言葉は、おそらく心の底からだったに違いない。 *** 「なら、全部飛び越えられるわ。…あなた、興奮してるんでしょ?体を火照らせて…」 「…」 「どうなんだ!R子さん、はっきり認めちゃえばいいじゃないか。そのものずばりじゃないんですか?」 「どうなのよ、えー!」 ”バシーン!” 「わああー!」 U子は俯いていたR子の顎を掴み、顔を上向かせると、いきなり一発ビンタを喰らわせた。 思わず体を横にぐらつかせたR子に、U子はボンと胸のあたりを突いた。 R子はその勢いでソファに尻もちをつくように押し倒され、勢いで両足を全開してしまった。 で…、しりもちをついた状態で後方に倒れこみ、彼女の目線は開いた自分の両足の間からこちらを見下ろす3人の顔を捉えていた。 「さあ、これから私がしっかりホントの”あなた自身”を確かめてあげるわ!」 U子によるアドリブに沿った逆療法はこれより、約15分、続くことになる…。 それは言葉と軽い暴力も伴う、まさに目を覆うばかりの”それ”だった…。 そこで際立ったのは、U子のメリハリが効いた言葉責めで、まさに何とも手慣れたものであった。 その様子をじっと”観察”していたW氏は、思わずクスッと口元をほころばし、随所でR子へ”アドバイス”を飛ばしていた。 *** 「思いっきり自分を開放するんだ、R子さん!人の愛を嗅ぐなんてことじゃ、決して幸せもエクスタシーも味わうことなどできないんだよ。さあ、全部ボーンと飛び越えてしまうんだよ!心の中も全部晒しなさい!」 R子は必死だった。 今ここで自分から逃げれば、ずっと変われない。 長年の”ビョーキ”に苦しんだ日々からおさらばするには、ここで自分自身を開放して、重かった一歩を踏み出さなくてはと…。 その結果…、彼女は然るべきカベの向こう側へ行き着くことができた。 「いい?今後、私の他でも人の愛を嗅ぐようなことをまたしたら、今のアナタが晒したのここでの恥ずかしい姿、スマホで動画に取りこんだから、ネットで晒すからね」 「わー、もうしません。私、もうしませーん!わー‼」 ソファで大股開き状態のまま、R子は幼稚園児のように両手を目に当てて泣きじゃくっていた。 他人の愛を嗅いで、満たされない心を自らで縛りつけてきた女…、R子35歳、独身…。 やっと今、素直な気持ちで本来のテッペンに到達させることが叶ったのであった…。
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